- Home
- 研究テーマ:機械要素
「機械要素」に関する研究
機械は、歯車、軸受、ネジ、バネなどの多くの要素に支えられて稼動しています。機械要素に関連する研究の多くは、社会のニーズに対して即戦的に対応できる必要があり、いわゆる応用研究の領域に位置付けられます。本研究室で取り組んでいる「機械要素」に関する主な研究を紹介します。
エタノールターボポンプの開発に向けたシールシステムの特性評価
近未来のロケット推進剤の一つに、エタノールの使用が検討されています。エタノールは毒性や腐食性が極めて低く、また、凝固点が十分に低いため液体のまま取り扱うことができるという特長があります。しかしながら、エタノール用ターボポンプの開発において、エタノールを作動流体とした場合のシールシステムの設計および評価は重要なキーテクノロジーですが、その検討は十分になされていません。
当研究室では、フローティングリングシールおよびリップシールのそれぞれの特性を評価することができる試験機を用意し、その流体力学特性、摺動特性、漏れ特性等の評価を行っています。特に、沸点が低く気化しやすいといったエタノール独自の特性に着目し、一般的な潤滑油を作動流体とした場合のシール特性との差異に焦点を当て、最適なシールシステムの提案を試みています。
なお本研究は、宇宙航空研究開発機構との共同研究として行われています。
タイミングチェーン/ガイド間の油膜厚測定とその低摩擦化
現在、自動車の燃費向上とCO2排出量の低減は極めて大きな課題であり、エンジンピストン部における摺動摩擦のみならず、あらゆる周辺部品の低摩擦化、高効率化が求められています。タイミングチェーンとガイド間の摺動もその対象の一つであり、十分な油膜形成によるさらなる低摺動化が強く望まれています。
一般的なタイミングチェーンのリンクプレートとガイド間の潤滑は、弾性流体潤滑状態とされています。ガイドは樹脂でできており、油膜の圧力によって極めて容易に変形することが確認されています。右上図は光干渉法によって計測したその油膜形状の一例を示しており、右下図はその油膜形状を三次元的に表示したものです。これまでの研究により、チェーン形状を変化させるとそれに応じて油膜厚さが変化することが確認できました。現在は、レイノルズ方程式と弾性変形式の連立から推定した油膜形状との比較を行い、それに基づくチェーンプレート形状の最適化を試みています。
なお本研究は、企業との共同研究として行われています。
精密機器用動圧スピンドルの特性把握とその高性能化
近年のOA、AV機器の性能の発達はめざましく、その回転主軸(スピンドル)部に求められる性能も年々厳しくなってきています。従来、これら小型機器のスピンドルには転がり軸受が用いられてきましたが、近年の高速、高精度回転の要求や小型化の動向を受け、それらスピンドルに流体動圧軸受が採用されるケースが増えてきています。
当研究室では、これら小型スピンドルの更なる性能向上を目指し、より適切な軸受設計の提案を行っています。右図はジャーナル型動圧気体スピンドルの性能評価装置とその回転振れ測定の様子であり、ロータ外周のバケットを利用したエアタービン方式により、約30000rpmまでの回転試験を実現しています。過去の研究において、スパイラル溝の最適設計を行えば振れ精度を約半分にまで小さくできることを示し、実際のレーザビームプリンタ用ポリゴンミラーモータに採用されました。
[1] S. Ikeda et al., Lubrication Science, 22, 9 (2010) 377.
超精密位置決め用空気圧サーボ軸受アクチュエータの開発とその応用
位置決め技術における近年の超精密化の流れを受け、当研究室では「空気圧サーボ軸受アクチュエータ」の開発を行っています。本アクチュエータは、駆動体底面に設けられた静圧軸受部への給気圧を空気圧サーボ弁によって超精密に制御することにより、超精密位置決めを実現することができます。本アクチュエータは、静圧軸受が本来持つ安定性を十分に活かした機構となっており、オープンループでも駆動が可能である点に大きな特長があります。空圧制御分野において世界最高レベルである1nmの位置決め分解能を達成しており、現在は、右図に示すような超精密XYθテーブルへの応用や動圧スピンドルのアクティブ振れ制御等の課題に取り組んでいます。
なお本研究は、企業との共同研究として行われています。
[2] A. Sugimoto et al., Proc. Instit. Mech. Eng. J, J. of Eng. Tribol., 225, 5 (2011) 1.